訪問歯科算定要件書類-その1(介護サービス事業者運営書類)

介護保険事業者として必須の6つの運営書類

訪問歯科診療において、多くの先生が戸惑うのが「介護保険」の複雑な制度です。医療保険とは全く異なる法令や運営基準が存在し、歯科医師による居宅療養管理指導の情報提供書などの算定要件書類以外の運営書類が必要です。

実は、長年訪問歯科に取り組んでいる医院でも、介護保険事業者としての運営基準を満たしていないケースが多々あります。医療保険同様、介護保険についても指導の対象となるため、事前の準備が不可欠です。

この記事では、居宅療養管理指導のサービス提供事業者として必要な6つの重要書類について、具体的な記載項目とともに詳しく解説します。

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準拠すべき主な法令

訪問歯科診療における居宅療養管理指導サービスは、以下の法令に準拠して運営する必要があります:

  • 介護保険法
  • 健康保険法
  • 個人情報保護法
  • 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)

⚠️ 重要ポイント
特に重要なのは運営基準を定めた厚生省令第37号で、事業所運営の詳細な基準が規定されています。また、介護報酬改定に関する告示や通知、各都道府県・市町村の条例も遵守が必要です。

介護保険事業者として必要な6つの運営書類とその詳細

1. 運営規程

概要: 事業所の運営に関する重要事項を定めた内部規程

院内掲示必須
配布義務なし

記載必須項目

  • 事業の目的及び運営の方針: 事業が何を目指し、どのような方針で運営されるかを明確にします。関係区市町村、地域の保健・医療・福祉サービスとの緊密な連携に努める旨も記載されます。
  • 従業者の職種、員数及び職務の内容: 居宅療養管理指導に従事する職員の種類、必要な人数、およびそれぞれの職務内容を定めます。
  • 営業日及び営業時間: サービスを提供する曜日と時間帯を定めます。医療機関が居宅療養管理指導(往診または訪問診療)を行う日時を別に定めている場合は、曜日および日時を具体的に記載する必要があります。
  • 指定居宅療養管理指導の種類及び利用料その他の費用の額: 提供される居宅療養管理指導の種類と、それにかかる利用料やその他の費用の額を明記します。
  • 通常の事業の実施地域: サービスを提供する地理的な範囲を定めます。
  • 虐待の防止のための措置に関する事項: 利用者への虐待を防止するための具体的な取り組みや体制について定めます(令和9年3月31日まで努力義務)。
  • その他運営に関する重要事項: 上記以外で事業運営上重要となる事項を定めます。これには、健康保険法、介護保険法等の遵守、指導困難時の連携医療機関紹介、提供したサービス内容の診療録への速やかな記載などが含まれます。
2. 個人情報取扱通知

概要: 他のサービス事業者等との情報共有時の個人情報使用同意書

利用者への交付必須
説明・同意取得必須

💡 実務ポイント
サンプル例では契約の内容のみ記載して、契約の同意は「訪問歯科診療及び居宅療養管理指導の同意書」で行うことを想定しています。医療保険における内容も合わせて記載しています。

記載必須項目

  • 同意内容: 利用者およびその家族の個人情報について、必要最小限の範囲内で使用することへの同意を明記します。
  • 使用する目的: 居宅サービス計画に沿った円滑なサービス提供、サービス担当者会議、介護支援専門員との連絡調整等において必要な場合に使用される旨を記載します。
  • 使用する事業者の範囲: 居宅サービス計画に定められた事業者(例:居宅介護支援事業者、他の介護サービス事業者など)を明記します。
  • 使用する期間: 居宅療養管理指導契約書の有効期間に準じる旨を記載します。
  • 条件: 個人情報の提供は必要最小限とし、提供に当たっては関係者以外の者に漏れることのないよう細心の注意を払うこと、個人情報を使用した会議、相手方、内容等の経過を記録しておくこと、などが含まれます。
3. 重要事項説明書

概要: サービス開始時に利用申込者や家族に説明する重要事項をまとめた書面

利用者への交付必須
院内掲示必須

📢 2024年改定情報
2024年(令和6年)の介護報酬改定により、重要事項説明書に記載されている重要事項等の情報を、法人のホームページまたは情報公表システムへ掲載することが義務化されました。

記載必須項目(抜粋)

  • 事業者(法人)の概要
  • 事業所の概要
  • 事業の目的と運営の方針
  • 提供するサービスの内容
  • 営業日時
  • 事業所の職員体制
  • 利用料(基本部分、加算)
  • キャンセル料
  • 支払い方法
  • 緊急時における対応方法
  • 苦情相談窓口
4. 介護サービス契約書

概要: 居宅療養管理指導契約書は、サービス利用を開始するにあたり、事業者と利用者との間で交わされる法的拘束力を持つ書面

利用者への交付必須
法的拘束力あり

💡 実務ポイント
サンプル例では内容のみ記載して、契約の同意は「訪問歯科診療及び居宅療養管理指導の同意書」で行うことを想定しています。

記載必須事項(抜粋)

  • 契約の目的
  • 契約期間
  • 個別サービス計画の作成及び変更に関する事項
  • 提供するサービスの内容及びその変更に関する事項
  • 利用料等の支払いに関する事項
  • 契約の終了に関する事項
  • 損害賠償に関する事項
  • 守秘義務に関する事項
  • 苦情処理に関する事項
5. 居宅療養管理指導説明書

概要: 利用者に対する分かりやすい説明資料

配布必須ではない
視覚的説明推奨

配布必須ではありませんが、視覚的資料を活用した分かりやすい説明が推奨されています。

6. 訪問歯科診療及び居宅療養管理指導の同意書

概要: 医療保険と介護保険の同意を一括で取得する統合書面

高齢者の負担軽減
統合型フォーマット

✅ 統合書面のメリット
「個人情報取扱通知」、「介護サービス契約書」それぞれに署名して頂くのは高齢者さんには大変ですので、訪問診療の申込み同意と合わせて、記載いただくフォーマットで対応しています。医療保険(訪問診療の申込み)と介護保険(居宅療養管理指導)の内容は明確に分けて、同意を取ることがポイントです。

介護保険事業者としての適切な書類整備のメリット

実務上のメリット

  • 介護保険法令遵守による安心運営: 指導リスクの軽減
  • 効率的な事業所運営: 標準化された手続きによる時間短縮
  • 利用者・家族との信頼関係構築: 透明性の高い説明と同意取得

まとめ

訪問歯科診療に必要な書類はまだ数多くあります。法令や通知を探し、必要な情報を得て書類を作成するのはとても手間がかかりますので、訪問歯科診療算定要件書類として、介護サービス事業者の運営に関わる必要書類を紹介しました。他に必要な書類も紹介していく予定です。

※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況については関係機関にご確認ください。

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