2026年診療報酬改定_訪問歯科増減算まとめ

✅ 本記事は答申に基づく確定情報です

本記事は中医協答申書(令和8年2月13日)に基づく確定点数でシミュレーションしています。正式な告示・通知(3月上旬予定)で施設基準の詳細等が確定します。

📌 まず結論から

訪問診療料は分割運用で守れますが、訪衛指の減収は月10人以上の施設では避けられません

個人宅 1人 😊 微増 訪衛指+18点
施設 2〜9人 😊 微増 訪衛指+4点 × 人数
施設 10人以上 😟 減収 訪衛指-35点 × 人数が効く
+特別の関係 😱 大幅減収 訪衛指140点化+訪問診療4・5半減

※ DH同行・訪衛指算定を前提とした「1回の訪問あたり」の増減です。ベースアップ評価料(賃上げ原資)は含みません。

2026年改定 訪問歯科の収益シミュレーション

「結局、うちの医院は増えるの?減るの?」——この疑問に、施設の患者規模別に具体的にお答えします。

📋 シミュレーションの前提条件

  • 診療時間は20分以上を前提(20分未満の場合は別途減算あり)
  • DH同行で訪問歯科衛生指導料を同日算定する想定
  • 歯科外来物価対応料は訪問診療では算定不可のため含みません
  • ベースアップ評価料は賃上げ原資であり、医院の収益増減とは別に参考表示します
  • 現行の歯科訪問診療料の基本点数は変更なしです



⚠️ 今回の改定を理解する最重要ポイント

歯科訪問診療料と訪問歯科衛生指導料では人数の数え方が異なるため、同じ施設でも異なる区分が適用されます。

算定項目 カウント方法 区分
歯科訪問診療料 同一建物居住者
(同一日に同一建物で診療した人数)
1人→訪問診療1
2-3人→訪問診療2
4-9人→訪問診療3
10-19人→訪問診療4
20人以上→訪問診療5
訪問歯科衛生指導料 単一建物診療患者
(同一月に同一建物で指導した総人数
1人→区分1
2-9人→区分2
10人以上→区分3

💡 実態:例えば30人の入所者を診療する施設では、1日あたりの診療人数を9人以下に分割して訪問診療3(310点/人)で算定するのが一般的です。しかし訪衛指は月の総患者数でカウントされるため、30人全員が「10人以上」の区分3になります。つまり、施設訪問では訪問診療3+訪衛指3(10人以上)の組み合わせが実態として多いのです。この「分割できるもの」と「分割できないもの」の違いが、改定の損益を左右します。

パターンA:個人宅 1人訪問

【想定】個人宅に訪問し1人の患者を診療+DH衛生指導。歯援診1届出済。

算定項目 現行 改定後 増減
歯科訪問診療1(1人・20分以上) 1,100点 1,100点 ±0
在宅歯科医療推進加算 → 在宅療養支援歯科診療所加算1 100点 100点 ±0
訪問歯科衛生指導料(単一建物1人) 362点 380点 +18
合計 1,562点 1,580点 +18点 😊

💡 コメント:歯援診1の場合は訪衛指+18点でわずかに増収。歯援診2の場合は加算が100点→50点に半減するため-32点と微減になります。歯援診2→1への移行検討をお勧めします。

📎 参考:ベースアップ評価料(Ⅰ)※賃上げ原資

ベースアップ評価料(Ⅰ) 3イ(同一建物居住者以外) 41点→66点 +25点

※ 全額を対象職員の賃上げに充てる必要があり、医院の利益にはなりません。

パターンB:施設訪問 5人(単一建物 2〜9人)

【想定】施設に月5人の患者を診療(同一日5人→訪問診療3)+DH衛生指導(単一建物5人→区分2)。

算定項目 現行 改定後 増減
歯科訪問診療3(310点)× 5人 1,550点 1,550点 ±0
訪衛指(単一建物2-9人)× 5人 1,630点 1,650点 +20
合計(施設1回あたり) 3,180点 3,200点 +20点 😊

💡 コメント:単一建物の総患者数が9人以下であれば、訪衛指は「2-9人」区分(326→330点)が適用されるためわずかに増収です。訪問診療料は変更なし。

📎 参考:ベースアップ評価料(Ⅰ)※賃上げ原資

ベースアップ評価料(Ⅰ) 3ロ(同一建物)× 5人 50点→55点 +5点

パターンC:施設訪問 15人(訪問診療3+訪衛指3の実態)

【想定】施設で月15人の患者を診療。1日あたり9人+6人に分割→訪問診療3。但し訪衛指は単一建物15人=区分3(10人以上)

算定項目 現行 改定後 増減
歯科訪問診療3(310点)× 15人(分割運用) 4,650点 4,650点 ±0
訪衛指(単一建物10人以上)× 15人 4,425点
(295点×15)
3,900点
(260点×15)
-525
合計(施設あたり) 9,075点 8,550点 -525点 😟

💡 コメント:これが施設訪問の典型的な実態です。訪問診療料は分割運用で訪問診療3を維持できますが、訪衛指は月の総人数で決まるため分割できません。「10人以上」区分が適用されると-35点/人が効き、15人なら-525点の減収です。

📎 参考:ベースアップ評価料(Ⅰ)※賃上げ原資

ベースアップ評価料(Ⅰ) 3ロ × 15人 150点→165点 +15点

パターンD:訪問診療4・5を算定する場合(歯援診なし・経過措置終了後)

【想定】施設で同一日に15人を診療(分割しない)→訪問診療4。歯援診の届出なし・新設施設基準も未充足。経過措置終了後(令和9年6月以降)。訪衛指は単一建物15人=区分3(10人以上)

算定項目 現行 改定後 増減
歯科訪問診療4(160点→50%減算で80点)× 15人 2,400点
(160点×15)
1,200点
(80点×15)
-1,200
訪衛指(単一建物10人以上)× 15人 4,425点
(295点×15)
3,900点
(260点×15)
-525
合計(施設あたり) 6,825点 5,100点 -1,725点 😱

📊 パターンC(訪問診療3維持)との比較

パターンC(9人+6人に分割→訪問診療3) 改定後 8,550点 -525点
パターンD(分割せず→訪問診療4+50%減算) 改定後 5,100点 -1,725点
分割しないことによる追加損失 -1,200点

💡 コメント:訪問診療4・5に歯援診の届出も新設施設基準の充足もなければ、50%減算が適用されます。同じ15人でもパターンC(分割して訪問診療3)と比較してさらに1,200点の差が生じます。訪問診療はできるだけ3を維持する分割運用が大原則です。なお経過措置は令和9年5月31日までですが、歯援診の届出を行えば減算を回避できます。

📎 参考:ベースアップ評価料(Ⅰ)※賃上げ原資

ベースアップ評価料(Ⅰ) 3ロ × 15人 150点→165点 +15点

施設規模別の影響一覧(9人 vs 10人の崖)

訪問診療料は分割運用で訪問診療3を維持できるとした場合、増減は主に訪問歯科衛生指導料の区分変動で決まります。

施設の
総患者数
訪問診療
区分(実態)
訪衛指
区分
訪衛指
1人あたり増減
施設あたり
合計影響
1人 訪問診療1 1人 +18点 +18点
5人 訪問診療3 2-9人 +4点 +20点
9人 訪問診療3 2-9人 +4点 +36点
10人 ←崖 訪問診療3(分割) 10人以上 -35点 -350点
15人 訪問診療3(分割) 10人以上 -35点 -525点
20人 訪問診療3(分割) 10人以上 -35点 -700点
30人 訪問診療3(分割) 10人以上 -35点 -1,050点

⚠️ 9人と10人の間に「崖」がある:単一建物の総患者数が9人→10人になるだけで、訪衛指の1人あたり増減が+4点→-35点に逆転します。訪問診療料は分割で訪問診療3を維持できても、訪衛指は月の総人数でカウントされるため回避できません。

そして実態として、施設から口腔ケアの申込みがある患者を断ることはできません。月10人以上の施設では、訪衛指の減収は事実上避けられないというのが今回の改定の現実です。

追加:特別の関係施設の場合

【想定】上記パターンに加え、訪問先が「特別の関係」にある施設の場合。歯援診の届出なし。経過措置終了後(令和9年6月以降)。

特別の関係にある施設では、上記の訪衛指減収に加えて以下の追加ダメージが発生します。

追加の減算項目 内容 適用時期
訪衛指 注4 特別の関係の施設は人数区分にかかわらず一律140点で算定 即適用
(経過措置なし)
訪問診療4・5の減算 歯援診未届出かつ施設基準不充足の場合、所定点数の100分の50 経過措置
R9年5月31日まで

■ 特別の関係施設 15人の場合(分割運用で訪問診療3、歯援診なし)

算定項目 現行 改定後 増減
歯科訪問診療3(310点)× 15人 4,650点 4,650点 ±0
訪衛指 注4(特別の関係=一律140点)× 15人 4,425点
(295点×15)
2,100点
(140点×15)
-2,325
合計(施設あたり) 9,075点 6,750点 -2,325点 😱

💡 コメント:特別の関係施設では訪衛指が人数区分にかかわらず一律140点になるため、影響は甚大です。15人で-2,325点、30人なら-4,650点です。さらに1日10人以上を診療して訪問診療4・5を算定する場合、歯援診未届出では追加で50%減算も発生します(経過措置中は猶予あり)。

シミュレーションの結論

📝 まとめ:「守れるもの」と「守れないもの」

守れる:訪問診療料
1日あたりの診療人数を9人以下に分割すれば、訪問診療3(310点)を維持できます。これは従来通りの運用の大原則であり、今回の改定でも変わりません。
守れない:訪問歯科衛生指導料
訪衛指は月の総患者数でカウントされ、施設から口腔ケアの申込みがある患者の指導を断ることは現実的にできません。月10人以上の施設では、1人あたり-35点の減収は事実上避けられません。

つまり今回の改定は、小規模施設(月9人以下)では微増、中~大規模施設(月10人以上)では訪衛指の減収が不可避という構図です。施設訪問中心の医院は、訪衛指の減収を織り込んだ上で、訪問診療3の維持・歯援診の届出・新たな加算(医科連携訪問加算等)の活用で収益を守る戦略が求められます。

ベースアップ評価料と物価対応料の整理

「ベースアップ評価料が増えるから大丈夫」と思われるかもしれませんが、訪問診療では注意が必要です。

項目 訪問での
算定可否
内容 性質
歯科外来物価対応料 ✕ 不可 初診時3点・再診時1点(外来のみ) 外来専用
歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ) ○ 可能 3イ 66点(同一建物外)
3ロ 11点(同一建物)
賃上げ原資
同 注5(継続賃上げ加算) ○ 可能 107点(同一建物外)
21点(同一建物)
賃上げ原資
同(Ⅱ) ○ 可能 区分1~8(8~64点) 賃上げ原資

⚠️ ベースアップ評価料は「医院の利益」ではありません

  • 収入の全額を対象職員のベースアップ等に充てることが要件
  • 2026年改定で対象を「主として医療に従事する職員(医師及び歯科医師を除く)」から「勤務する職員」に拡大
  • 40歳未満の勤務歯科医師・事務職員も対象に(院長等の役員報酬は引き続き対象外)
  • 賞与・時間外手当・法定福利費の増加分にも使用可
  • 毎年度、賃金改善実績報告書の提出が必要
  • 届出は簡素化されており、未届出の医院は早めの届出を推奨

🆕 2026年改定:対象職員の拡大

職種 現行 改定後
DH・歯科技工士・歯科業務補助者等 ○ 対象 ○ 対象
受付・事務職員 △ 条件付き ○ 対象
40歳未満の勤務歯科医師 △ 条件付き ○ 対象
40歳以上の勤務歯科医師 ✕ 対象外 ? 告示で確定
院長(開設者・役員) ✕ 対象外 ✕ 対象外

改定で対象が「主として医療に従事する職員(医師及び歯科医師を除く)」から「勤務する職員」に変更されます。「勤務する職員」の文言上は40歳以上の勤務歯科医師も含まれると読めますが、告示・通知での確定を待つ必要があります。なお、賃上げ目標率は職種により異なり、事務職員・看護補助者は+5.7%、DH等の医療関係職種・40歳未満の勤務歯科医師は+3.2%とされています。

📘 ベースアップ評価料(Ⅰ)3イと3ロの区分

同一建物居住者の有無で大きく点数が異なります。

3イ 66点 訪問診療1で純粋に1人だけを訪問した場合のみ
3ロ 11点 上記以外すべて(訪問診療2~5、同一患家2-3人で訪問診療1を算定する場合等)

※注15(歯訪診の届出なし)・注19(特別の関係)で算定する場合も3ロとなります。

対応策チェックリスト

✅ 影響が小さい医院(個人宅中心・1施設あたり9人以下)

  • 基本的に現行通りの運用で大きな影響なし
  • ベースアップ評価料の届出がまだの場合は早めに対応
  • 歯援診2→1への移行を検討(加算100点 vs 50点の差は大きい)

⚠️ 影響が大きい医院(1施設あたり10人以上)

  • 訪衛指の-35点/人の影響を、施設ごとの患者数で試算する
  • 訪衛指の減収は口腔ケアの依頼を断れない以上、事実上避けられないことを前提に収支計画を見直す
  • 訪問診療料は1日9人以下の分割運用で訪問診療3を維持(これが最大の防衛策)
  • 歯援診の届出(訪問診療4・5の減算回避)を経過措置中に準備

🚨 緊急対応が必要な医院(特別の関係施設中心)

  • 訪衛指の注4(一律140点)は改定施行日から即適用(経過措置なし)
  • 訪問診療4・5の50%減算は令和9年5月31日まで経過措置あり
  • 歯援診の届出 or 新設施設基準の充足を最優先で準備
  • 特別の関係にあたらない施設への訪問開拓も並行して検討
  • 収支シミュレーションを行い、経営計画を見直す

📖 出典

厚生労働省「個別改定項目(その1)~(その3)」(令和8年1月23日~30日 中医協)

厚生労働省 中医協答申書(令和8年2月13日)

※本記事のシミュレーションは典型的なパターンに基づく概算です。実際の収益は、算定する管理料・加算・処置等によって異なります。

※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況については関係機関にご確認ください。

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