2026年歯科診療報酬改定ー訪問歯科(「2026年3月5日告示対応」)

✅ 本記事は答申に基づく確定情報です

本記事は「個別改定項目(その1)~(その3)」および中医協答申書(令和8年2月13日)に基づき、確定点数を反映しています。正式な告示・通知(3月上旬予定)で施設基準の詳細等が確定します。

📌 まず結論から

今回の改定では、歯科訪問診療料の基本点数に変更はありません。そのため、通常の訪問歯科診療に取り組んでいる医院にとって、基本点数面での影響はないと考えられます。

主な変更は施設基準の見直し・加算の再編・訪問歯科衛生指導料の点数変更であり、特に「歯科訪問診療4・5」を多く算定している医院、特別の関係施設への訪問を行っている医院、歯援診の届出を検討している医院は、改定内容を確認しておくことをお勧めします。

→訪問歯科衛生指導料3(10人以上)は、想定していたよりも大きい減算(295点→260点、-35点)になりました。

個別改定項目(その3)+答申から読み解く訪問診療の改定

2026年4月に施行予定の診療報酬改定では、「質の高い在宅歯科医療の提供の推進」を基本方針として、訪問診療に関する大きな見直しが行われます。本記事では、改定のポイントを「現行制度」と「改定後」を比較しながら、わかりやすく解説します。

📋 本記事の読み方

青色背景 現行制度(令和6年度まで) 緑色背景 改定後(令和8年度~)
オレンジ枠 新設項目 新設 見直し 廃止

1. 改定の全体像

今回の改定では、以下の8つの見直しが行われます。

No. 改定項目 区分
1 歯科訪問診療1の加算体系再編(在宅歯科医療推進加算→3段階加算) 廃止新設
2 歯科訪問診療の緊急対応時の運用明確化 新設
3 歯科訪問診療4・5の施設基準の新設 新設
4 歯援診1・2・歯援病の施設基準見直し(臨床研修施設・後方支援機能の評価) 見直し
5 訪問歯科衛生指導料の点数見直し・特別の関係施設への評価適正化 見直し
6 在宅歯科栄養サポートチーム等連携指導料の区分4新設・歯科衛生士への拡大 新設見直し
7 医科連携訪問加算の新設(歯科側で算定) 新設
8 歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の見直し 見直し

💡 改定の背景

高齢化の進行により在宅歯科医療のニーズが増大する一方、歯科医師の高齢化により将来の担い手不足が懸念されています。今回の改定は、在宅歯科医療の質を確保しながら、人材育成多様な診療形態への対応を図るものです。また、医科歯科連携の推進、特別の関係施設への評価適正化、歯科衛生士の活用拡大も重要なテーマとなっています。

2. 歯科訪問診療料(C000)の改定

廃止 新設 2-1. 加算体系の再編

現行の「在宅歯科医療推進加算」が廃止され、施設の機能・実績に応じた3段階の加算に再編されます。

📘 現行(令和6年度)

在宅歯科医療推進加算

一律 100点

歯科訪問診療1に対して、在宅で療養する患者に訪問した場合

✕ 廃止

📗 改定後(令和8年度~)

以下の3段階に再編 ↓

  • 在宅療養支援歯科診療所加算1(歯援診1):100点
  • 在宅療養支援歯科診療所加算2(歯援診2):50点
  • 在宅療養支援歯科病院加算(歯援病):100点

💡 ポイント:歯援診1と歯援病は現行と同じ100点を維持しますが、歯援診2は半額の50点に。施設の実績に応じた差が明確になりました。歯援診1の取得が収益面でより重要になります。

新設 2-2. 緊急対応時の運用明確化

同一建物で予定外の患者を急遽診療した場合の取扱いが明確化されました。

🆕 【新設】緊急対応時の算定ルール

1人の同一建物居住者に歯科訪問診療を実施した際に、同一建物に居住する他の患者に対して、患者等の求めに応じて緊急に歯科訪問診療を実施する必要性を認め、結果として2人への訪問診療となった場合、いずれの患者も歯科訪問診療1を算定して差し支えない

⚠️ 注意:緊急に歯科訪問診療を実施する必要があった理由について、診療録に記載すること

💡 実務上のポイント:これまで「同一建物で2人診療したら歯科訪問診療2」とされていたケースでも、急遽の依頼であれば両患者とも歯科訪問診療1(1,100点)が算定可能になります。ただし、診療録への理由記載が必須です。「最初から2人の予定だった」場合は該当しませんのでご注意ください。

新設 2-3. 歯科訪問診療4・5の施設基準

同一建物で10人以上を診療する場合(歯科訪問診療4・5)に、新たな施設基準が設けられます。

🆕 【新設】歯科訪問診療4・5の施設基準

(1) 次のいずれかに該当すること

  • イ. 歯科訪問診療1または歯科訪問診療2を行っていること
  • ロ. 当該地域において、保険医療機関・介護福祉施設等と連携していること

(2) 歯科訪問診療が適切に実施できる体制を有すること

⚠️ 施設基準を満たさない場合は減算

以下のいずれにも該当しない場合、歯科訪問診療4・5は所定点数の100分の50により算定することとなります。

在宅療養支援歯科診療所1の届出あり
在宅療養支援歯科診療所2の届出あり
在宅療養支援歯科病院の届出あり
④ 🆕 【新設】上記の施設基準(訪問診療1・2の実施 or 地域連携)を満たす

📅 経過措置:令和9年5月31日までは、全ての医療機関が施設基準を満たすものとみなされます。

📊 減算の影響(具体例)

区分 20分以上 20分未満 減算後(20分以上) 減算後(20分未満)
訪問診療4(10-19人) 160点 96点 80点 48点
訪問診療5(20人以上) 95点 57点 48点 29点

3. 在宅療養支援歯科診療所の施設基準改定

見直し 3-1. 歯援診1の施設基準

【訪問診療実績要件】評価期間と選択肢が大きく変更されます

📘 現行(令和6年度)

過去1年間に歯科訪問診療1・2・3を合計18回以上
(月平均1.5回)

📗 改定後(令和8年度~)

以下(イ)~(ニ)のいずれかを満たす

選択肢 要件
(イ) 直近1か月に歯科訪問診療1・2・3を合計10回以上
(ロ) 直近1か月に歯科訪問診療2~5を5回以上算定し、うち20分以上の割合が6割以上
(ハ) 直近1か月に在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料(又は小児)を合計5回以上
(ニ) 🆕 【新設】研修歯科医を受け入れ、歯科訪問診療に係る教育を実施している臨床研修施設

💡 解説:(イ)だけを見ると要件は厳しくなっていますが(月平均1.5回→月10回)、(ロ)(ハ)(ニ)の選択肢が追加されたことで、施設訪問主体、口腔リハビリ主体、研修施設など多様な医療機関が届出しやすくなりました。また、「過去1年間」から「直近1か月」評価に変わったため、毎月の実績管理が重要になります。

【連携実績要件】新たな選択肢が追加されます

選択肢 要件(いずれか1つを満たすこと)
(イ) 地域ケア会議等に年1回以上出席【現行維持】
(ロ) 介護保険施設等への技術的助言・研修等【現行維持】
(ハ) 他の歯科医療機関との連携実績が年1回以上【現行維持】
(ニ) 🆕 【新設】過去1年間に以下のいずれかを1回以上算定
在宅歯科栄養サポートチーム等連携指導料(1~3)、退院時共同指導料1、医科連携訪問加算、在宅歯科医療連携加算1・2、小児在宅歯科医療連携加算1・2、在宅歯科医療情報連携加算、在宅患者連携指導料、在宅患者緊急時等カンファレンス料

💡 ポイント:(ニ)は「診療報酬の算定実績」で連携を証明できる選択肢です。会議出席や研修実施が難しい医院でも、日常の訪問診療で上記の算定項目を1回でも算定していれば要件を満たせます。

見直し 3-2. 歯援診2の施設基準

📘 現行(令和6年度)

過去1年間に歯科訪問診療1・2・3を合計4回以上

📗 改定後(令和8年度~)

以下のいずれかを満たすこと

  • (イ) 過去1年間に4回以上【現行維持】
  • (ロ) 🆕 臨床研修施設であること

💡 ポイント:臨床研修施設は、訪問実績がなくても歯援診2を届出可能になります。研修歯科医への訪問診療教育の入口として位置づけられています。

4. 在宅療養支援歯科病院(歯援病)の施設基準改定

見直し 4-1. 後方支援機能の評価

病院歯科の役割として、診療所からの紹介患者受入れ実績が評価されるようになります。

📘 現行(令和6年度)

過去1年間に歯科訪問診療1・2・3を合計18回以上算定

📗 改定後(令和8年度~)

以下(イ)~(ニ)のいずれかを満たす

選択肢 要件
(イ) 🆕 【新設】歯科訪問診療1・2・3の算定件数+他の保険医療機関からの要請により困難な患者の受入れを行った実績が合計18回以上
(ロ) 直近1か月に歯科訪問診療2~5を5回以上、うち20分以上が6割以上
(ハ) 直近1か月に在宅患者訪問口腔リハ指導管理料等を5回以上
(ニ) 🆕 【新設】研修歯科医を受け入れ、歯科訪問診療に係る教育を実施している臨床研修施設

💡 解説:(イ)の「困難な患者の受入れ実績」が新設されました。これにより、自院での訪問実績が少なくても、地域の診療所からの紹介を受け入れている病院が評価されます。病診連携の推進が目的です。

5. 訪問歯科衛生指導料(C001)の改定

見直し 5-1. 点数の見直し

区分 現行 改定後 増減
1 単一建物診療患者が1人の場合 362点 380点 +18
2 単一建物診療患者が2人以上9人以下 326点 330点 +4
3 1及び2以外の場合(10人以上) 295点 260点 -35

💡 ポイント:1人訪問は+18点と増点ですが、10人以上は-35点と減点です。施設への大人数訪問から個別訪問へのシフトが促されています。

新設 5-2. 特別の関係施設への評価適正化

🆕 【新設】注4

当該保険医療機関と特別の関係にある他の保険医療機関等において療養を行っている患者に対して訪問歯科衛生指導を実施した場合は、人数にかかわらず140点を算定する。

💡 解説:歯科訪問診療料では既に「特別の関係」施設への規定がありましたが、訪問歯科衛生指導料にも同様の規定が設けられます。関連法人のサ高住・有料老人ホーム等への訪問の場合に適用されます。通常の1人訪問(380点)と比較すると240点の差が生じます。

6. 在宅歯科栄養サポートチーム等連携指導料(C001-7)の改定

新設 見直し 6-1. 区分4の新設と実施者の拡大

自宅で療養する患者への食事観察等を評価する新区分が設けられます。

区分 対象・内容 点数
1 他の保険医療機関に入院している患者に対し、栄養サポートチーム等の構成員として診療 100点
2 介護保険施設等に入所している患者に対し、施設での食事観察等に参加 100点
3 障害児入所施設等に入所している患者に対し、施設での食事観察等に参加 100点
4 🆕 【新設】自宅での療養を行っている患者に対し、食事観察等を行い、口腔機能評価に基づく指導 100点

実施者の拡大

📘 現行(令和6年度)

歯科医師のみ

📗 改定後(令和8年度~)

歯科医師 または 歯科医師の指示を受けた歯科衛生士

📋 C001-7の算定上の留意点

性質 単独の指導料(加算ではない)
併算定可 訪問歯科衛生指導料、介護保険DH居宅療養管理指導
併算定不可 口腔機能実地指導料(2026年明確化)

💡 ポイント:区分1~4の全てにおいて、歯科衛生士が実施者として認められました。歯科医師の指示のもと、歯科衛生士による効率的な栄養サポートチーム活動が可能になります。特に区分4(自宅療養患者)は訪問診療と組み合わせることで、在宅での食事支援の幅が広がります。

7. 医科連携訪問加算【新設】

新設 医科連携訪問加算(歯科側で算定)

🆕 医科連携訪問加算

500点

医科の保険医療機関からの依頼に基づき、その入院患者に対して歯科訪問診療を実施した場合に、歯科訪問診療料に加算。

※入院中1回の算定です。

⚠️ 併算定不可:周術期等口腔機能管理計画策定料、周術期等口腔機能管理料(Ⅰ)~(Ⅳ)、回復期等口腔機能管理計画策定料、回復期等口腔機能管理料

💡 解説:周術期管理の対象でない入院患者(例:口腔衛生不良が指摘された内科入院患者など)への歯科訪問診療が評価されます。医科側では「口腔管理連携加算」(入院中1回)を算定でき、医科・歯科双方にメリットのある仕組みです。地域の病院との連携を積極的に進めることで算定機会が広がります。

8. 歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の見直し

見直し 訪問診療に係るベースアップ評価料

区分 現行 改定後 増減
訪問診療(同一建物居住者以外) 41点 66点 +25
訪問診療(同一建物居住者) 10点 11点 +1
注5 継続賃上げ加算(同一建物居住者以外) 107点 新設
注5 継続賃上げ加算(同一建物居住者) 21点 新設

💡 ポイント:個人宅への訪問診療では、ベースアップ評価料だけで66点(+注5で173点)が上乗せされます。スタッフの賃上げ原資としても重要です。令和9年6月以降は所定点数の100分の200となります。対象職員は歯科医師を除く歯科医療従事者です。

9. 歯援診届出による算定項目と点数一覧

在宅療養支援歯科診療所(歯援診)の届出により、以下の算定項目で点数の優遇を受けることができます。

9-1. 歯科訪問診療料(C000)関連

(1) 在宅療養支援歯科診療所加算【2026年新設】

加算名 点数 算定条件
在宅療養支援歯科診療所加算1 100点 歯援診1+訪問診療1
在宅療養支援歯科診療所加算2 50点 歯援診2+訪問診療1
在宅療養支援歯科病院加算 100点 歯援病+訪問診療1

⚠️ 現行の「在宅歯科医療推進加算(一律100点)」は廃止され、上記に再編されます。

(2) 歯科訪問診療4・5の算定【2026年改定】

届出状況 算定
歯援診1・2または歯援病の届出あり 満額算定
新設施設基準を満たす 満額算定
上記以外 100分の50

※経過措置:令和9年5月31日まで全医療機関は満額算定可

(3) 歯科訪問診療補助加算(注13)【現行維持】

施設区分 同一建物居住者外 同一建物居住者
歯援診1・2、歯援病、口管強 115点 50点
上記以外 90点 30点

(4) 通信画像情報活用加算(注17)【現行維持】

算定可能な施設 点数
歯援診1・2、歯援病、地域歯科診療支援病院 30点/月1回
上記以外 算定不可

※歯科衛生士が単独訪問し口腔内画像を歯科医師に送信した場合に算定

9-2. 歯科疾患在宅療養管理料(C001-3)【現行維持】

施設区分 点数
歯援診1 / 歯援病 340点
歯援診2 230点
上記以外 200点

9-3. 歯科訪問診療移行加算(注17)【現行維持】

施設区分 点数
口管強(歯援診連携を含む) 150点
歯援診、歯援病、上記以外 100点

9-4. 在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料(C001-5)【現行維持】

施設区分 点数
歯援診1 / 歯援病 850点
歯援診2 750点
上記以外 650点

9-5. その他の加算【現行維持】

算定項目 算定可能な施設 点数
在宅歯科医療情報連携加算 歯援診1・2、歯援病(届出) 100点/月1回
在宅患者歯科治療時医療管理料 歯援診1・2、歯援病(届出) 45点

10. まとめ:歯科医院がとるべき対応

10-1. 改定のポイント整理

項目 影響・対応
歯科訪問診療4・5 施設基準の新設。令和9年6月以降は基準未達の場合、所定点数の100分の50。経過措置期間中に対応を検討。
在宅療養支援歯科診療所加算 一律100点から3段階に再編。歯援診2は50点に半減。歯援診1の取得がより重要に。
歯援診1の実績要件 「過去1年間18回」→「直近1か月」評価。(イ)~(ニ)の選択肢から診療形態に合った要件を選択可能。
臨床研修施設の優遇 研修歯科医への訪問診療教育を実施していれば、訪問実績なしでも歯援診の届出が可能
訪問歯科衛生指導料 1人訪問は+18点だが、10人以上は-35点。特別の関係施設は一律140点に。
栄養サポートチーム連携 自宅療養患者への対応(区分4)が新設100点。歯科衛生士も実施可能に。
医科連携訪問加算 医科からの依頼による入院患者への訪問に500点加算。地域の病院との連携強化で算定機会拡大。
ベースアップ評価料 個人宅訪問で66点(+注5で173点)。スタッフの賃上げ原資として重要。

10-2. 医療機関別の対応チェックリスト

📋 歯援診1を届出している医療機関

  • 新しい要件(直近1か月)を確認し、(イ)~(ニ)のいずれかを満たせるか検討
  • 連携実績要件の(ニ)(診療報酬項目の算定)を活用できるか確認
  • 毎月の実績管理体制を構築(月10回 or 施設訪問5回以上+20分6割 等)

📋 歯科訪問診療4・5を算定している医療機関

  • 経過措置期間(令和9年5月31日まで)に対応を検討
  • 歯援診の届出、または新設施設基準(訪問診療1・2の実施、地域連携)の準備
  • 減算の影響をシミュレーション(100分の50は大きな減収)

📋 臨床研修施設

  • 研修歯科医への訪問診療教育を実施することで、歯援診の届出が可能に
  • 歯援診1:(ニ)で訪問教育実施 → 歯援診2:(ロ)で臨床研修施設として届出

📋 特別の関係施設への訪問を行っている医療機関

  • 訪問歯科衛生指導料の注4適用(一律140点)を踏まえた収支シミュレーション
  • 通常の1人訪問(380点)との差額240点×回数の影響を確認

📋 地域の病院と連携している医療機関

  • 医科連携訪問加算(500点)の算定機会を検討
  • 周術期管理の対象外の入院患者への訪問でも加算可能
  • 連携先の病院(歯科なし)に口腔管理連携加算の案内を行うことで、双方にメリット

📖 出典

厚生労働省「個別改定項目(その1)~(その3)」(令和8年1月23日~30日 中医協)

厚生労働省 中医協答申書(令和8年2月13日)

※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況については関係機関にご確認ください。

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