訪問診療算定方法理解-基礎その3(訪問診療区分と時間による点数評価について)

⏰ 歯科訪問診療の重要な特徴

  • 📋 医療と介護保険の2つの保険制度を使うこと
  • 👥 1つの建物で診療する人数や回数によって評価される算定区分が異なること
  • 時間によって点数の評価が分かれていること

⏰ 時間による点数評価の重要性

歯科訪問診療における最大の特徴の一つは、診療時間によって点数評価が決定されることです。効率性だけを追求することが必ずしも適切とは言えませんが、適正な点数を確保するため点数獲得効率を理解することは、訪問診療を成功させる上で不可欠です。

⏰ 訪問診療料の時間による点数評価

区分 20分以上 20分未満 差額
訪問診療1 1,100点 1,100点 0点
訪問診療2 410点 287点 △123点
訪問診療3 310点 217点 △93点
訪問診療4 160点 96点 △64点
訪問診療5 95点 57点 △38点

20分以上
20分未満

診療時間算定における基本的な考え方

訪問診療の時間算定において、何が含まれ、何が除外されるかを正確に理解することが重要です。

明確に除外される時間

  • 移動時間:医院から訪問先、または訪問先間の移動
  • 準備・片付け時間:診療機材の準備および片付け作業
  • 介護保険による居宅療養管理指導:別制度であり、訪問診療料とは別途時間算定

診療時間として認められるもの

除外規定として明示されているのは、移動時間と準備・片付け時間です。また、介護保険制度下での歯科医師による居宅療養管理指導については、別制度のため訪問診療料とは独立して時間を算定する必要があります。

一方で、カルテ記載、各種報告書作成、患者さんとの会話などについては、明確な除外規定は設けられていません。つまり、患者さんと対面して行われる全ての活動は、広義の診療時間と考えて良いと思います。

重要:明確な除外規定が存在しないため、患者さんと対面して行う準備・片付け以外の診療に付随する業務については、診療時間と考えられます。

20分以上の算定の必要性を検証する

訪問診療では20分未満と20分以上で点数評価が明確に分かれており、多くの医院では「20分以上の算定」を目指す傾向があります。しかし、この方針が本当に効率的なのか、数値的に検証してみましょう。

実際の効率性は、処置内容と診療時間の組み合わせによって決まります。ここでは訪問診療3を例に、具体的な計算を行ってみます。

効率性の数値検証(訪問診療3の場合)

前提条件:20分以上の診療を実際20分、20分未満の診療を12分と仮定

📊 1分あたりの点数効率比較

20分以上

310点 ÷ 20分

= 15.5点/分

20分未満(12分)

217点 ÷ 12分

= 18.1点/分

この計算から分かるように、12分で完了する診療を無理に20分に延長することは、むしろ効率を低下させる可能性があります。

効率性の転換点:

・217点÷14分≒15.5点/分となるため、実際の診療時間が14分以上を要する場合には、20分以上の区分で算定する方が効率的となります。

・また処置点数を考慮すれば、△2.6点/1分×20分=52点以上の処置が20分以上の算定が20分未満の点数獲得効率の分岐点になります。

12分の設定が適切とは考えていませんが、この考え方は訪問診療のアポイントを考える上で、重要な指針となりますので、ぜひ理解しておいてください。

📊 訪問診療3の場合の効率計算例

20分以上(20分と仮定)

310点 ÷ 20分

= 15.5点/分

20分未満(12分と仮定)

217点 ÷ 12分

= 18.1点/分

結論:実診療時間が14分以上なら、20分以上の区分算定の方が効率的

217点 ÷ 14分 ≒ 15.5点/分

訪問診療料区分別の効率性

各訪問診療料区分における効率性を客観的に評価するため、統一条件下での比較分析を行います。

分析条件:1人あたり診療時間12分(20分未満区分)、施設までの移動時間片道20分

この条件下では、訪問診療1が最も高い効率性を示し(21.15点/分)、続いて訪問診療3(13.20点/分)となります。一方、訪問診療4・5では効率が大幅に低下し、それぞれ6.0点/分、4.07点/分となります。

📈 効率性比較シミュレーション

前提条件:1人あたり診療時間12分(20分未満)、移動時間片道20分

区分 診療人数 総時間 総点数 効率(点/分)
訪問診療1 1人 52分 1,100点 21.15
訪問診療2 3人 76分 861点 11.33
訪問診療3 9人 148分 1,953点 13.20
訪問診療4 10人 160分 960点 6.00
訪問診療5 20人 280分 1,140点 4.07

⚠️ 重要なポイント

訪問診療4・5は時間あたりの効率が大幅に低下しますが、あくまでも前提条件をつけた場合ですので、実態の移動平均時間、平均診療時間で計算する必要はあります。ただ、極端に短い診療時間を良しとしないなら、訪問診療4・5を出来るだけ避けた方が良いのは間違いなさそうです。

効率性向上への道筋

これまで検討してきた通り、訪問診療料区分によって時間あたりの獲得点数には明確な差が存在します。点数効率の観点からは、1分あたりの点数が高い選択をすることは基本的なセオリーと言えるでしょう。ただし、あくまで一定の診療時間に対する獲得出来る点数効率です。

より重要な視点は労働時間に占める診療時間の割合をいかに最大化するかという点です。効率の高い点数区分のみで診療を完結させることを第一優先順位にすると、結果的に売上は減少する可能性があります。

優先順位の明確化

第1優先:1日の労働時間を可能な限り診療時間割合を増加。(アポイントの空きを作らない)

第2優先:点数獲得効率の高い算定区分の選択

第1優先順位に重要なのは、点数評価の対象とならない時間の短縮です。具体的には、医院での準備・片付け時間、移動時間、施設内での診療以外の時間などが該当します。訪問診療を効率的に運営するためには、これらの診療外時間の短縮が最も重要な課題となります。

なお、診療時間外等の削減、効果的なアポイント管理については、別の機会に詳しく解説予定です。

まとめ

歯科訪問診療における時間による点数評価を理解することで、以下の重要なポイントが明確になります。

効率性の観点:診療時間に対する点数効率では、訪問診療1が圧倒的に優位であり、訪問診療4・5は相対的に低効率となります。20分以上・20分未満の区分による点数差も、診療計画において重要な考慮要素です。

1日の売上最大化:訪問診療は基本診療料(訪問診療料)と管理料(歯科医師による居宅療養管理指導、歯在管)の点数割合が高いという特性があります。そのため、効率性を理由に診療人数を制限するよりも、1日の診療人数を最大化することが売上向上において優先されます。

重要課題:真の効率性向上は、診療以外の時間(移動時間、準備・片付け時間、施設内での待機時間等)をいかに短縮できるかにかかっています。これらの時間短縮こそが、訪問診療成功の鍵となる最も重要な課題です。

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