はじめに
これから訪問歯科を始める医院にとって、もっとも重要なのは初診患者をどのように獲得するかという点です。今回は、これまで付き合いのないケアマネージャーや施設から紹介をいただく、いわゆる新規開拓の営業方法について詳しく解説いたします。
訪問歯科の広報活動の難易度は、エリアによって大きな差があります。訪問歯科の実施医院が少ない、いわゆる競合が少ないエリアでは、挨拶回りや自院の訪問歯科サービスの紹介により、新規からの紹介を比較的受けやすい環境にあります。
しかし、訪問歯科が盛んな都市部では状況が一変します。訪問歯科の営業担当者が毎日のように介護事業所に営業に訪れる激戦区となっており、施設では必ず協力医療機関として提携している歯科医院が存在します。新しい施設が建設される場合は、訪問歯科の営業が殺到する状況です。
現在の市場環境と課題
介護事業者の視点から見たリスク
ケアマネージャーや施設側からすれば、現在問題なく付き合っている訪問歯科を変更することは相応のリスクを伴います。「もし、サービスが悪かったらどうしよう」「利用者様からクレームが発生したらどう対応すればよいのか」と考えるのは当然のことです。
特に都市部の施設においては、介護関係者からすれば訪問歯科は選びたい放題の状況です。現在の協力歯科医院を変更しても、代わりに施設に来院してくれる訪問歯科医院はいくらでも存在するため、わざわざリスクを取って変更する必要性を感じていないのが実情です。
このような競合が多く存在する状況で、後発の訪問歯科医院が新規で紹介を受けるには、従来とは異なるアプローチが必要となります。
従来の営業方法の問題点
提案型営業の不足
多くの歯科医院が苦戦している理由は明確です。提案型営業ができていないからです。サービスを羅列するだけの営業、お願いベースの営業、競合と同じことを繰り返す営業では、激しい競争の中で選ばれることはありません。
画一化されたサービス内容
多くの訪問歯科医院が行っているサービスは、以下のような類似した内容です:
よくあるアピールポイント
- 報告書をケアマネージャーに毎月持参する
- 施設負担金を患者様順で並べた一覧表を作成する
- 請求書郵送の切手代などを医院が負担する
- 口座振替等、利用者や施設職員の手間が少ない選択肢を用意
- 歯ブラシや販促物を配布する
- 口腔ケア用品の無償配布
- 無料健診の実施
- 施設で患者様の居室を回る、歩行器・車椅子の移動介助を行う
- 口腔ケア手技の勉強会開催
- 嚥下診療・嚥下リハビリの実施
- ミールラウンドへの参加等、施設算定加算への協力
- 入れ歯のネーム入れ
これらは聞き飽きられており、差別化できず、すぐに真似され、他の歯科医院でもアピールする内容では成果に繋がりにくいのが現実です。
挨拶回り・顔出し営業の限界
関係性だけでは成果を上げるのは困難です。介護職員は非常に忙しく、メリットの小さい営業に何度も時間を割いていただくことはできません。
ただし、定期的に顔を出すという手法は、ケアマネージャーに対してはある程度有効であると考えられます。理由は、多くの訪問歯科の営業が同じようなアピールに来る現状では、最後に来た訪問歯科のイメージが残るためです。口腔ケアの啓蒙チラシを配ること自体は直接的な成果に繋がりませんが、本質的な課題である「忘れられない」という点で意味があり、チラシ自体は顔を出す口実として機能しているのです。
効果的な新患獲得戦略
営業の本質を理解する
営業とは、良いサービスを効果的に広報することです。良いサービスがないのに営業の成果は上がりません。営業担当者が優秀な場合は一時的に獲得できる場合もありますが、長期的に見れば淘汰される運命にあります。重要なのは、良いサービスを前提として、そのサービスをどれだけ効果的に広報活動ができるかという点です。
提案型営業の実践
他院が行っていない全く新しいサービスを創造するのは容易ではありません。一般的に行われているサービスについて「一体何を目的としているか」を考え直し、伝え方・見せ方を工夫する必要があります。
具体的な提案の構築方法
例えば、施設への請求の際、請求書や報告書を整理しているのは「施設職員の手間をかけさせないため」です。提案は以下の視点から構築していくべきです:
- 施設職員に手間をかけさせないために、どのような取り組みを提供出来るか
- 患者様の満足度向上のためには何が必要か
- 患者様のご家族が安心できるためには何が重要か
効果的な提案の3つのポイント
1. 相手のメリットから考える
多くの介護職員のメリットは「利用者が喜んでくれること」が前提になっています。これが基本にあることは忘れてはいけません。その他に施設が獲得できる加算などは経済的なメリットになり得ますが、口腔関係の単位数は小さなメリットでしかありません。
2. 良い未来を想像させる
紹介した訪問歯科が入ったことで「利用者や入所者の口腔内が改善し、喜び、紹介した自分の顔が立つ」ということを想像させる提案でなければなりません。どれだけ鮮明に想像させられるかが提案の良し悪しに関わってきます。
3. 相手が興味ないと言いにくい内容であること
加算で単位数が獲得できることを全面に押し出すだけでは不十分です。小さな加算を算定するつもりはない相手には通用しないからです。あくまでも提案の幹は、利用者や入所者にとって(職員にとって)良い未来でなければなりません。
営業・提案活動における重要な考慮事項
獲得までの時期を長期的に考える
短期的な獲得だけを狙わないことが重要です。例えば、競合より施設で良い提案ができたからといって、既存の訪問歯科からすぐに変更するまでには至らないケースがあります。強引に獲得を目指すのではなく、次のチャンスを待つことも必要です。
次の介護報酬改定時、施設長が交代した場合、現在の訪問歯科がクレームの対象となった場合など、獲得のチャンスはいつか必ずやってきます。その時まで、しっかりと覚えていただくことが大切です。
競合からターゲットを変えて見る
潜在的な患者様の掘り起こしも重要な戦略です。一般的に、ケアマネージャー1人は約30人程度の利用者を担当しており、平均的に訪問歯科を受診している利用者は3〜5人といったところです。
歯科治療が必要ない要介護者はほぼ存在しないため、残りの25人が訪問歯科を申し込まない理由を解決できる提案を行うことも大切です。理由として「訪問歯科自体を知らない」「経済的な理由」「痛みや不具合を我慢している」などが考えられます。これらの問題を解決できる提案があれば、新患発生のチャンスは大きく広がります。
デンタルネットの営業支援サービス
私たちデンタルネットは、このような現場での豊富な経験を通じて、他の歯科医院では持っていない独自の営業ノウハウを蓄積してきました。
私たちが提供できる価値
- 抽象化しながら細部まで練り込んだ提案の作成方法
- お客様のメリットを最大化する提案の組み立て方
- 良い未来を具体的にイメージさせるプレゼンテーション手法
- 多くの人に「今より良い」と感じてもらえる提案内容の設計法
そして何より、競合歯科医院に真似されない、持続可能な差別化戦略を構築する方法を熟知しています。訪問歯科の競争に勝つためには、戦略的な提案型営業が必要不可欠です。それができなければ、どんなに良いサービスを提供していても、選ばれるチャンスを逃してしまいます。
まとめ
訪問歯科診療における新規患者獲得は、従来の挨拶回りや画一的なサービス紹介では限界があります。重要なのは、相手の立場に立った提案型営業を実践し、長期的な視点で関係性を構築していくことです。
デンタルネットでは、このような営業戦略の構築から実践まで、包括的なサポートを提供しています。実際の支援実績については、こちらのページでご確認いただけます。訪問歯科診療の新規開拓でお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況については関係機関にご確認ください。