訪問歯科実務-未収金管理について

はじめに

訪問歯科の未収金を見逃していませんか?確かに、未収金が原因で監査に入られることは考えにくいのが実情です。しかし、未収金管理を疎かにすることで起こる本当のリスクは、監査よりもはるかに身近で深刻なものです。

法的リスクは実際どの程度?

まず、一部負担金の徴収が法律で義務付けられていることは事実です。

法令・規則 規定内容
健康保険法 第74条 患者は一部負担金を「支払わなければならない」
医療機関はこれを「受領しなければならない」
療担規則 第2条の4の2 経済上の利益の提供による誘引の禁止
療担規則 第5条 保険医療機関は一部負担金の支払いを受けるものと規定

ただし、実際に問題となるのは「割引診療」や「患者誘引」と判断される限られたケースです。負担金を回収しない=不正請求の温床と考えられます。

問題になるケース①

一部負担金を徴収していないことが常態化している

問題になるケース②

特定の施設だけ負担金を徴収していない

✓ 結論:回収努力をしている記録があれば、未収金があっても監査リスクは低い

「割引診療」や「患者誘引」と判断されなければ、それほど心配する必要はありません。

では、本当のリスクとは?

⚠ 未収金管理の甘さが招く「内部不正」

訪問歯科に長く携わっていると、
決して珍しくない頻度で
内部不正の話を耳にします。

💰

負担金の行方不明

🚨

従業員による窃盗・横領

外来診療と違い、訪問診療では現金の流れが見えにくくなります。「入金があったかどうか」、「請求金額と現金は正しいか」を誰も確認しない体制では、不正が起きても気づけません。そして残念ながら、これは珍しいことではないのです。

なぜ訪問診療は未収金が発生しやすいのか

1

回収タイミングが曖昧

外来と違い都度集金ではないため、いつまでに回収すべきかが明確でない

2

回収の先送り

「次回診療時に」「次回リコール時に」と先送りにして、そのまま忘れる

3

郵送でのやり取り

支払い者との郵送やり取りで、一定数は支払いが遅れる・支払われない

4

請求先の誤り

請求先を間違えて、正しい支払い者に届いていない

これらの要因が重なると、「誰がいくら回収したか」「本当に入金されたか」が分からなくなります。この不透明さこそが、内部不正の温床となるのです。

正しい未収金管理の方法

内部不正を防ぐカギは、「お金の流れを見える化する」ことです。以下の管理体制を構築しましょう。

日次管理(毎日)

入金された現金と請求された金額の整合性を毎日確認する

→ これにより「回収したはずのお金がない」という事態を早期発見できます

月次管理(毎月)

未収金の確定 診療月の翌月末に入金されないものを「未収金」とする
記録項目 診療月ごとに、負担金の総額・入金金額/件数・未収金額/件数を記録
未収金一覧の発行 毎月月初に、全診療月分の未収金患者一覧を事務が発行

回収管理のルール化

📋 現場回収分

回収予定日を記入させる。次回診療予定が未定なら、請求書を事務が回収し郵送に切り替える

📮 郵送分

領収書は事務の手元で管理し、入金確認後に発送

督促のタイミング

未収1ヶ月

未収分の請求書+督促状(入金のお願い)を同封し、今月請求金額と未収金の合計を請求

未収2ヶ月

請求先・宛先の再確認。必要に応じて担当ケアマネや施設職員に確認

介護保険の負担金返金について

💡 補足:返金時の注意点

介護保険は医療保険より運用が厳しく、取下や返戻に伴う負担金返金も厳密に確認されることがあります。患者さんに返金した場合は、記録(証拠)を必ず保管しておきましょう。最近は医療保険の指導でも、返戻・減点時の返金確認をされるケースが増えています。

まとめ

訪問歯科の未収金管理で本当に怖いのは

監査リスク

内部不正リスク

お金の流れを「見える化」し、毎日・毎月のチェック体制を整えることで、
スタッフを守り、健全な診療所運営を実現しましょう。

訪問歯科診療の運営についてご質問・ご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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