訪問歯科診療の算定要件において、特に理解が難しい「同一建物」と「単一建物」の概念について、その違いを分かりやすく解説します。
🔍 訪問歯科診療算定要件の特徴
- 📋 医療と介護保険の2つの保険制度を使うこと
- 👥 1つの建物で診療する人数や回数によって評価される算定区分が異なること
- ⏰ 時間によって点数の評価が分かれていること
訪問歯科の算定要件の特徴は、医療と介護保険の2つの保険制度を使うこと、診療する人数や回数によって評価される算定区分が異なること、時間によって点数の評価が分かれていることですが、今回は人数や回数の数え方について解説します。
訪問歯科は一度に診療する人数が増えるほど点数が減算していく点数のたてつけになっています。訪問診療料とその他の管理料で数え方が違い2種類あります。そして複雑なのは「単一建物」の数え方です。個々に要件を覚えるのではなく、それぞれの違いから整理すれば、それ程難しくなく理解出来ます。
同一建物と単一建物に関係がある算定項目
関連算定項目
■ 基本診療料:
■ 歯在管を除く管理料:
算定区分の詳細
同一建物の算定区分
※点数は訪問診療1を除き、20分以上の点数です。
単一建物の算定区分
※ 重要な注意事項
- 単位数内は歯科医師による居宅療養管理指導です。訪問衛生士指導料、歯科衛生士による居宅療養管理指導も同じ区分で3つに別れています
- 医療保険では1点=10円ですが、介護保険では1単位=10円が基本的な報酬を表す単位です
1. 同一建物居住者と単一建物居住者の数え方の違い
① 同一建物と単一建物の基本概念
まず、理解しておくべきは、1つの建物内で、診療した人数の数え方の違いです。
- 歯科訪問診療料(同一建物)は1つの建物で診療した人数(回数)/1日/医療機関ごと
- 訪問歯科衛生指導料・居宅療養管理指導(単一建物)は、1つの建物で診療した患者数/1ヶ月/医療機関・介護サービス事業所ごと
※建物の考え方は同じです。建築基準法第2条第1項に規定する「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの」を指します。渡り廊下のみでつながっている外観上明らかに別の建物の場合、それぞれ別の建物として扱います。
2. 同一建物(回数)と単一建物(人数)で異なる数え方のルール
① 実績と予定
同一建物と単一建物の最も重要な違いは、カウントする基準とタイミングにあります。訪問診療料(同一建物)は、同じ施設で1日に「何回診療したか」のみですが、居宅療養管理指導など(単一建物)は、月初の予定での算定が当月に限り認められています。
② 夫婦等を想定した場合の評価の違い
「同一世帯」とは、生計(家計)を同じくし、一緒に生活を営んでいる世帯のことを指します。歯科訪問診療料では、夫婦等の場合で1人目を歯科訪問診療料1、2人目を歯科訪問診療料2で減算して算定していますが、居宅療養管理指導(単一建物)では、2人とも単一建物居住者1人の場合の区分で算定します。
③ 単一建物居住者のみに適用される特別なカウント方法
単一建物居住者の人数カウントには、建物や施設の種類、利用状況に応じて、以下のような特別なルールが適用されます。
- ① グループホームはユニットごとに人数を数えます。
- ② 病院は病棟ごとに人数を数えます。
- ③ 1つのマンションで、診療・サービス提供する割合が10%未満の場合は1人扱いで数えます。
- ④ 小規模な20戸未満のアパートや集合住宅で2名にサービスを提供した場合は1人扱いで数えます。
💡 豆知識:グループホームのユニットとは?
グループホームのユニットは、原則として個室とキッチンなどの共用スペースで構成され、少人数の入居者が生活を共にする介護単位であり、全て5人から9人以下で1ユニットとなっていることがグループホームの主要な特徴です。ユニットは、特別養護老人ホームなど他の介護施設でも採用されているケア方式です。
いじわるな問題
Q.1Fと2Fが各ユニットのグループホームで、3Fが20戸未満の集合住宅の場合で1月に居宅療養管理指導を以下のように提供した場合の単一建物区分はどうなるでしょうか?
- 3F:2名 / 2戸
- 2F:5名 / 1ユニット
- 1F:5名 / 1ユニット
A. 各階の単一建物区分は以下のようになります。
- 1F:2〜9人区分 (グループホームはユニットごとにカウントするため、5名で該当)
- 2F:2〜9人区分 (グループホームはユニットごとにカウントするため、5名で該当)
- 3F:単一建物居住者1人区分 (20戸未満の小規模集合住宅で2名以下のサービス提供の場合、1人扱いとなる特例が適用されるため)
本来3Fの2名は建物全体(12名)で数えますが、小規模な20戸未満の特例のために1人区分になります。
この問題のように、単一建物の算定では、例外規定の適用が基本的な数え方よりも優先される点に注意が必要です。