訪問歯科算定要件書類-その2(医療・介護算定要件書類)

🦷 医療・介護算定要件書類ガイド

訪問歯科を開始する際に最も準備が大変なのは算定要件書類です。その理由は、医療保険と介護保険が混在していることで手続きが複雑になっているからです。今回は必要な書式と、簡単に必要書類を理解するポイントを紹介します。

なぜ訪問歯科の書類は複雑なのか

訪問歯科の算定要件書類が複雑になる主な理由は以下の通りです:

1. 類似項目でも異なるルール

医療保険と介護保険で類似した算定項目(医療保険:歯科疾患在宅療養管理料、介護保険:歯科医師による居宅療養管理指導)であっても、記載必須事項の詳細や文書提供頻度等のルールが異なるため、必要な書類の種類が多くなります。

2. 文書提供先の増加

外来診療の場合、文書提供は診療録への添付と患者への提供のみですが、訪問歯科では算定要件上、提供先(患者及び家族、担当ケアマネージャー等)が増加します。さらに、診療に同席していない家族等へのサービスとして報告書類を発行する場合、郵送等の事務作業がより複雑になります。

3. 介護保険の厳格な要件

介護保険では説明と同意が厳格に求められるため、説明書類や運営基準上の必要書類がさらに増加します。

デンタルネットの統一書類アプローチ

デンタルネットでは、業務の複雑化を避けるため、医療保険と介護保険で書類を分けずに統一書類を使用することをおすすめしています。これにより、新しく入職される先生方の混乱を避け、効率的な運用が可能になります。

また、診療現場に立ち会われない紹介者や家族への報告もサービスの一環として提供できるよう、当書類では報告書としての役割も含めています。

💡 実務ポイント
訪問歯科事務処理の煩雑さへの解説はまた別の記事で紹介します

📥 算定要件書類の無料ダウンロード

以下の算定要件書類をPDF形式でダウンロードできるようにしていますので参考にして下さい。

📄 提供書類一覧

📧 Word・Excel形式をご希望の方はこちら

お問い合わせボタンから「訪問歯科算定要件書類希望」と記載しご連絡いただけば、Word、Excel形式でメールで送付します。

各書類の算定要件のポイント解説

1. 問診票(施設診療等簡易申込み書)

カルテ添付のみ

算定要件上の位置づけ

明確に算定要件上求められている文書がある訳ではありませんが、診療録の記載義務や無診察治療の禁止、そして適切な医療提供という観点から、歯科医師が患者に対して問診を行うことは実質的に義務付けられていると言えます。

💡 実用的な活用方法
通常は歯科医師が患者さんに聞き取りを行うものですが、意思疎通が困難な方も多くいらっしゃるので、老人ホームでの簡易申込み時に職員の方に記載いただくことも想定しています。また、ご家族に正式な申込み書をいただく前の簡易申込み書の役割も兼ねています。

2. 治療計画・管理指導計画書

カルテ添付必須
患者交付必須

統合書類の概要

この書類は2つの異なる算定要件を満たすための統合書類です。

治療計画書の要件

  • 歯科訪問診療料で求められている「計画的であること」の要件を満たすもの
  • 作成した治療計画の要点を診療録に記載(別紙可)する必要あり

管理指導計画書の要件

  • 歯科衛生士による居宅療養管理指導では、算定にあたり管理指導計画書を歯科医師・歯科衛生士が共同で作成
  • 患者さんへの同意を取る義務あり

3. 歯科疾患在宅療養管理料計画書

カルテ添付必須
条件付き交付義務

対象と概要

医療保険のみで保険請求する患者さんに対する継続管理の計画書です。

算定要件

  • 文書提供加算(10点)を算定する、しないに関わらず、初回の算定時は計画書作成が必要
  • 文書提供加算をする場合は、算定毎に作成・患者さんへの交付義務あり
  • 文書提供加算を算定しない場合は、管理計画の要点を診療録に記載

ℹ️ アイディア
問診票・治療計画書・管理指導計画書・歯在管管理計画書は内容が重複するので、1つの書類にまとめることも検討しても良いと思います。デンタルネットでは「訪問歯科総合支援ソフトSOL」で書類作成を行っていますので当該書類は作成しておりません。

4. Dr報告書・歯科医師による居宅療養管理指導情報提供書

ケアマネ交付義務
患者・家族交付推奨

算定要件上の役割

  • ケアマネジャーさんへの情報提供が算定要件
  • 担当者会議(患者さん宅に介護サービス提供者が集まる会議)に出席するか、文書提供するかのいずれかが必要

実用的な配慮

  • 算定要件で求められている項目のみをケアマネさんに提供しても、「有益な情報提供」とは言えないため、歯科治療の報告と合わせた書類として作成
  • 診療に同席しないお支払い者や家族への報告書類も請求書に同封するため、歯科治療内容を詳しく記載

💡 実務上の工夫
カルテ保管分、患者さん(訪問先)、施設職員さん、家族(お支払い者さん等)などの複数の配布先があることを踏まえて、複写式書類としている医院さんがほとんどです。

デンタルネットでも複写式書類を販売しています。

5. DH報告書・歯科衛生実地録(衛生士業務記録簿)

保管義務あり

統一書式の必要性

医療保険(訪問歯科衛生指導料)と介護保険(歯科衛生士による居宅療養管理指導)で書類の記載事項、交付義務などが違いますので、2種類の算定要件を満たす様式としています。

主な文書提供の違い

  • 訪問歯科衛生指導料: 衛生指導内容説明文書(実施時間含む)を毎回提供
  • 歯科衛生士による居宅療養管理指導: 管理指導計画書を開始時、計画変更時に利用者(患者)に提供

共通要件

居宅療養管理指導も訪衛指もどちらも、実施記録や提供文書の写しの保管義務があります。また、保管した書類を歯科衛生士業務記録簿として扱うことが認められています。

外来と共通する新製有床義歯管理に関わる書類など、算定時に必要な書類はありますが、訪問診療特有で必要な書類としては以上となります。

まとめ

訪問歯科の算定要件書類は、医療保険と介護保険の混在により複雑になりがちですが、統一書式を活用することで効率的な運用が可能になります。重要なポイントは以下の通りです:

効率化のポイント

  • 医療保険・介護保険両方に対応した統一書式の活用
  • 複写式書類による配布作業の効率化
  • 算定要件を満たしながらサービス向上も図る書類設計

運用上の注意点

  • 各書類の交付義務の違いを正確に把握
  • 保管義務のある書類の適切な管理
  • 関係者への適切な情報提供

🎯 実務上のメリット
これらの書類を適切に準備・運用することで、スムーズな訪問歯科診療の開始と継続が可能になります。

詳しいご質問やご相談については、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況については関係機関にご確認ください。